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第6話 掃除と料理

last update آخر تحديث: 2025-05-07 13:57:55

 要塞町に来てから、少しの時間が経った。

 私は相変わらずメイドの仕事をこなしながら、夜は執筆作業に勤しんでいた。

 先輩メイドのリリアは優しい子で、きちんと仕事を教えてくれる。メイド長はちょっと言い方がキツいけれど、仕事はきっちりこなすし悪い人じゃない。

 食事はちゃんと三食出て、寝床はふかふかのベッド。

 実家でいびられていたときよりずっと快適なのである。

 そんなわけで張り切って仕事をしていたら、なぜか周囲の評価が上がってしまった。

 例えば、トイレ掃除だ。

 トイレ掃除はメイドたちが嫌がる仕事ナンバーワン。

 お互いに押し付けあっていたので、私が引き受けた。

 軍団のトイレは確かに臭くて汚れている。

 だが、ここで放置はいけないのだ。

 割れ窓理論というのがあって、汚い場所は汚しても構わないという意識が生まれがち。

 逆にきちんと手入れしておけば、使う人もおのずと気を使う。

 だから私は、一度徹底的にトイレ掃除をした。

 素手でやる勇気はちょっとなかったので、革手袋を借りてきた。前世のようなゴムやビニールの手袋がないのが惜しまれる。

 トイレ洗剤もないものだから、洗濯用の石けんを投入。

 ブラシと雑巾で数日かけてピカピカにした。

「すごい、きれいになっている」

 軍団兵とメイドたちが目を丸くしている。

「せっかくきれいにしたんですから、今後は汚さないように使ってくださいね」

 笑顔とともに言えば、みんながうなずいてくれた。

 ついでに『トイレはきれいに使いましょう』と張り紙もしてもらった。

 結果、トイレはあまり汚れなくなり、掃除も楽になった。

「すげえなぁ。あの小汚いトイレが光り輝くようだぜ」

 クィンタが感心している。

「さすがに褒めすぎですよ」

「いや、そんなことはない。フェリシアちゃんが掃除しているのを何度か見たが、一生懸命で。感心したよ」

「トイレには神様が宿ると言いますからね。きっと神様が手助けしてくれたんです」

「トイレの神様? ははっ、そりゃあいい」

 そう答えると、クィンタはさも可笑しそうに笑っていた。

 他には料理があった。

 ゼナファ軍団での食事は簡素で、食材もメニューもあまりバリエーションがない。

 ちょっと栄養が偏るのではないかと思った。

 ある日、調理補助の仕事をしていると、料理長が話しかけてきた。

「メイドのみなさん。新しい料
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